健康診断で「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と言われた方へ
健康診断で、
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い
- 中性脂肪(TG)が高い
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い
- 「脂質異常症」「高コレステロール血症」と書かれている
- 再検査や医療機関への受診を勧められた
ということはありませんか?
脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪などに異常がみられる状態です。
多くの場合、自覚症状はありません。しかし、特にLDLコレステロールが高い状態が長期間続くと、少しずつ動脈硬化が進み、将来の心筋梗塞や脳梗塞などにつながる可能性があります。
近年は、現在のコレステロール値だけではなく、「どの程度高いLDLコレステロールに、どれくらい長い期間さらされてきたか」も重要と考えられるようになっています。
一方で、
「LDLコレステロールが140mg/dLを超えたら全員が薬を飲む」わけではありません。
必要な治療や目標値は、年齢、血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病、心筋梗塞・脳梗塞などの既往、家族歴などによって異なります。
当院では、健康診断の数値だけを見るのではなく、患者さん一人ひとりの動脈硬化リスクを総合的に評価し、生活習慣の改善だけでよいのか、薬物治療が必要なのかを判断します。
このような方はご相談ください
- 健康診断でLDLコレステロールが高いと言われた
- 中性脂肪(TG)が高いと言われた
- HDLコレステロールが低いと言われた
- 「脂質異常症」「高コレステロール血症」と診断された
- 健診結果に「要再検査」「要受診」と書かれていた
- LDLコレステロールが180~200mg/dL以上ある
- 若いころからコレステロールが高い
- 痩せているのにLDLコレステロールが高い
- 家族にもコレステロールが高い人がいる
- 家族が若くして心筋梗塞や狭心症になっている
- 高血圧や糖尿病もあり、動脈硬化が心配
- コレステロールの薬を飲んだ方がよいのか相談したい
- 現在薬を飲んでいるが、自分のLDL目標値を知りたい
脂質異常症にはほとんど自覚症状がありません。
「元気だから大丈夫」と考えず、健診で異常を指摘された場合には一度ご相談ください。
脂質異常症とは?
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準から外れている状態です。
主に、下記についてを確認します。
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪(トリグリセライド:TG)
- non-HDLコレステロール
日本動脈硬化学会では、以下を脂質異常症の診断基準としています。
| 項目 | 診断基準 |
|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 |
| 中性脂肪(TG) | 空腹時150mg/dL以上 |
| 中性脂肪(TG) | 随時175mg/dL以上 |
| non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 |
ただし、とても大切なのは、「診断基準」と「治療を始める基準」は同じではないということです。
例えば同じLDLコレステロール160mg/dLでも、他に危険因子のない若い方と、糖尿病や心筋梗塞の既往がある方では、将来の心血管疾患リスクは大きく異なります。
そのため脂質異常症では、数値だけでなく患者さん全体を見て治療方針を考える必要があります。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とは?
LDLコレステロールは一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
LDLコレステロールが高い状態が長期間続くと、コレステロールが血管壁に蓄積し、動脈硬化が進行しやすくなります。
その結果、
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
などの動脈硬化性疾患を起こすリスクが高くなります。
脂質異常症の治療では、特にLDLコレステロールを適切に管理することが重要です。
大切なのは「今のLDL」だけではありません
最近の脂質管理で重視されている考え方の一つが、LDLコレステロールへの生涯にわたる曝露です。
例えば、同じLDLコレステロール160mg/dLでも、
- 最近になって上昇した方
- 20代・30代から長期間高かった方
では、これまで血管が高いLDLコレステロールにさらされてきた期間が異なります。
動脈硬化は一日で起こるものではありません。
LDLコレステロールが高い状態が長く続くほど、血管への影響が積み重なっていくと考えられています。
そのため現在では、単に「今すぐ心筋梗塞になる可能性」だけではなく、長期的・生涯にわたるリスクを考えて、必要な方には早い段階から対策することが重要と考えられています。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)とは?
HDLコレステロールは一般に「善玉コレステロール」と呼ばれています。
HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合は、低HDLコレステロール血症と診断されます。
HDLコレステロールが低い場合には、
- 喫煙
- 肥満
- 運動不足
- 中性脂肪の上昇
- 糖尿病などの代謝異常
が関係していることがあります。
単純にHDLの数値だけを上げることを目的にするのではなく、生活習慣やその他の心血管リスクも含めて評価することが重要です。
中性脂肪(トリグリセライド・TG)とは?
中性脂肪は食事や飲酒などの影響を受けやすい脂質です。
- 食べ過ぎ
- 糖質の過剰摂取
- 飲酒
- 肥満
- 運動不足
- 糖尿病
などによって上昇することがあります。
診断基準は、空腹時150mg/dL以上または随時175mg/dL以上です。
中性脂肪が高い状態は動脈硬化リスクと関連します。
また、中性脂肪が極端な高値になる場合には、動脈硬化だけではなく急性膵炎にも注意が必要です。
脂質異常症はなぜ治療するのでしょうか?
脂質異常症の治療目的は、「健康診断の数字を正常範囲にすること」だけではありません。
最も重要なのは、将来の心筋梗塞や脳梗塞などを予防することです。
LDLコレステロールが高い
↓
血管壁にコレステロールが蓄積する
↓
動脈硬化が進む
↓
血管が狭くなる・詰まる
↓
心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などを起こす
という過程は、通常は長い年月をかけて進行します。
つまり、症状が出てから治療を始めるのではなく、症状がない段階から将来のリスクを減らすことが脂質異常症治療の目的です。
LDLコレステロールはいくつまで下げればよいのでしょうか?
脂質異常症の診療で非常によく聞かれる質問です。
結論からいうと、
すべての人に共通するLDLコレステロールの目標値があるわけではありません。
動脈硬化の危険性が高い人ほど、より低いLDLコレステロールを目標にします。
特に、
- 心筋梗塞や狭心症の既往がある
- 脳梗塞など動脈硬化性疾患の既往がある
- 糖尿病がある
- 慢性腎臓病がある
- 高血圧がある
- 喫煙している
- 家族性高コレステロール血症が疑われる
といった方では、より厳格な管理が必要になることがあります。
海外の最新ガイドラインでも「リスクに応じた目標値」が重視されています
2026年に米国心臓協会(AHA)・米国心臓病学会(ACC)が発表した最新の脂質異常症ガイドラインでも、患者さんの心血管リスクに応じてLDLコレステロールを管理する考え方がより明確になりました。
米国のガイドラインでは、一次予防の場合、
- 心血管リスクが境界域~中等度:LDL-C 100mg/dL未満
- 心血管リスクが高い:LDL-C 70mg/dL未満
などを治療目標として示しています。
また、すでに動脈硬化性心血管疾患があり、再発リスクが非常に高い方では、LDL-C 55mg/dL未満というさらに低い目標が示されています。
ただし、日本と米国では心血管疾患の発症率やリスク評価方法が異なるため、これらの数字を日本人にそのまま当てはめるわけではありません。
当院では、日本動脈硬化学会のガイドラインを基本としながら、国内外の最新知見も参考にして、一人ひとりに適切な目標値を考えます。
健康診断でコレステロールが高いと言われたら(当院の診療の流れ)
健康診断で異常を指摘されても、自覚症状がないため、そのままになってしまう方も少なくありません。
当院では、以下のような流れで評価します。
- STEP1 健康診断の結果を確認します
-
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールなどを確認します。
- STEP2 これまでの経過を確認します
-
過去の健康診断結果があれば、
- 以前は正常だったのか
- 数年前から高かったのか
- 徐々に上昇しているのか
を確認します。
脂質異常症では、「現在の値」だけではなく「これまでどの程度の期間高かったのか」も重要な情報です。
- STEP3 動脈硬化の危険因子を確認します
-
年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満、慢性腎臓病、心筋梗塞や脳梗塞などの既往、家族歴などを確認します。
- STEP4 脂質異常症の原因を確認します
-
脂質異常症には、生活習慣や体質によるものだけではなく、別の病気が原因となる「続発性脂質異常症」もあります。
必要に応じて、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患、肝疾患、使用している薬剤なども確認します。
- STEP5 必要に応じて、さらに詳しくリスクを評価します
-
一般的なコレステロール検査だけでは十分に評価できない場合には、患者さんの状態に応じて追加検査を検討することがあります。
Lp(a:リポ蛋白(a))とは?
近年、動脈硬化のリスクを評価する際に注目されている検査の一つが、Lp(a:リポ蛋白(a))です。
Lp(a)は、LDLに似た構造を持つリポ蛋白で、血液中の値が高いと心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが高くなることが知られています。
Lp(a)の値は主に遺伝によって決まり、食事や運動などの生活習慣では大きく変化しにくいという特徴があります。
2026年のAHA/ACCガイドラインでは、成人では少なくとも一生に一度Lp(a)を測定することが推奨されました。
特に、
- 若くして心筋梗塞になった家族がいる
- 家族性高コレステロール血症が疑われる
- LDLコレステロール以外のリスクも詳しく調べたい
- 心血管疾患のリスク評価が難しい
といった場合には、参考になる可能性があります。
※Lp(a)測定の必要性は患者さんごとに判断します。
ApoB(アポリポ蛋白B)とは?
LDLコレステロールは血液中に含まれる「コレステロールの量」をみる検査ですが、ApoBは動脈硬化を起こす可能性のあるリポ蛋白粒子の「数」を反映する指標の一つです。
特に、
- 中性脂肪が高い
- 糖尿病がある
- LDL-Cが十分低いにもかかわらず残余リスクが心配される
といった場合には、通常のLDLコレステロールだけでは十分に評価できないことがあります。
2026年のAHA/ACCガイドラインでも、こうした患者さんではApoBがリスク評価の補助として有用な場合があるとされています。
すべての患者さんに必要な検査ではありませんが、必要に応じて検討します。
冠動脈石灰化(CAC)スコアとは?
「薬を始めた方がよいのか、まだ生活習慣改善で経過を見てもよいのか」
判断が難しいケースでは、冠動脈CTで冠動脈の石灰化を調べる「CACスコア」がリスク評価の参考になることがあります。
2026年のAHA/ACCガイドラインでも、治療方針が明確でない一部の患者さんに対して、CACスコアを利用してリスクを再評価する考え方が重視されています。
ただし、これはすべての脂質異常症患者さんに必要な検査ではありません。
必要性がある場合には、適切な医療機関での検査を検討します。
家族性高コレステロール血症(FH)について
特に見逃してはいけないのが、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)です。
FHは遺伝的な原因で、生まれつきLDLコレステロールが高くなる病気です。
一般的な生活習慣病としての脂質異常症と異なり、若いころから高いLDLコレステロールに長期間さらされるため、早い時期から動脈硬化が進行する可能性があります。
次のような場合には注意が必要です。
- 未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上
- 若いころからLDLコレステロールが高い
- 腱黄色腫などがある
- 親や兄弟にもLDLコレステロールが高い人がいる
- 家族に若くして心筋梗塞や狭心症になった人がいる
「食事にはかなり気をつけているのにLDLコレステロールが非常に高い」
という場合も、単なる生活習慣の問題ではない可能性があります。
痩せていても脂質異常症になります
「太っていないのに、どうしてコレステロールが高いのですか?」
という質問もよくあります。
LDLコレステロールは、単純に体重だけで決まるものではありません。
- 遺伝的な体質
- 食事内容
- 年齢
- ホルモンの変化
- 甲状腺などの病気
も関係します。
そのため、痩せている方でもLDLコレステロールが高くなることがあります。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は、次の事項を組み合わせて行います。
- 1. 食事療法
- 2. 運動療法
- 3. 禁煙・適正体重の維持
- 4. 必要に応じた薬物治療
治療の目的は数値だけを下げることではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防することです。
食事療法
LDLコレステロールが高い場合には、脂肪の「量」だけでなく「質」に注意することが大切です。
特に、飽和脂肪酸を多く含む食品の摂り過ぎに注意します。
一方、
- 魚
- 大豆製品
- 野菜
- 海藻
- きのこ
- 食物繊維を含む食品
などをバランスよく取り入れます。
中性脂肪が高い場合には、
- 食べ過ぎ
- 糖質の過剰摂取
- アルコール
についても見直します。
大切なのは、極端な食事制限を短期間行うことではなく、長く続けられる食生活を作ることです。
運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、無理なく継続できる運動を行います。
適度な運動は、
- 中性脂肪の改善
- HDLコレステロールの改善
- 体重管理
- 血圧の改善
- 血糖の改善
などにも役立ちます。
年齢や持病によって適した運動量は異なりますので、無理のない範囲で続けることが重要です。
薬物治療
生活習慣を改善してもLDLコレステロールが十分に下がらない場合や、もともとの心血管リスクが高い場合には薬物治療を検討します。
LDLコレステロールを下げる代表的な薬として、
- スタチン
- エゼチミブ
- PCSK9阻害薬
などがあります。
患者さんの状態によっては、その他の脂質低下薬を使用することもあります。
どの薬を使用するかは、
- LDLコレステロール値
- 心血管疾患リスク
- 肝機能・腎機能
- 他の病気
- 現在使用している薬
などを総合的に判断して決めます。
スタチンは現在でも、心筋梗塞や脳梗塞などの予防を目的とした脂質低下治療の中心となる薬です。
「コレステロールの薬は一度飲んだら一生ですか?」
必ずしも、「一度飲み始めたら絶対に一生やめられない」というわけではありません。
ただし、薬を飲んでLDLコレステロールが正常になっている場合、それは薬が効いている結果であり、薬を中止すると再び上昇することも少なくありません。
継続が必要かどうかは
- LDLコレステロール値
- これまでの経過
- 動脈硬化リスク
- 生活習慣の変化
- その他の病気
を見ながら判断します。
自己判断で薬を中止せず、医師と相談しましょう。
脂質異常症についてよくあるご質問
健診で脂質異常を指摘された方はご相談ください
脂質異常症は、自覚症状がほとんどないまま動脈硬化が進行することがあります。
大切なのは、
「コレステロールが基準値を超えているか」だけではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクがどの程度あるのかを評価することです。
また最近では、現在のLDLコレステロール値だけではなく、高いLDLコレステロールに長期間さらされることによる生涯リスクも重視されています。
だからといって、健康診断でLDLコレステロールが高ければ、すべての方にすぐ薬が必要というわけではありません。
当院では、
- LDLコレステロールなどの検査値
- 過去からの推移
- 血圧・血糖・腎機能・喫煙歴
- 心血管疾患の既往・家族歴
などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療方針をご提案します。
健康診断で、
- 「コレステロールが高い」
- 「中性脂肪が高い」
- 「再検査が必要」
- 「病院を受診してください」
と言われた方は、健康診断の結果をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。

